夏休み明け。笑顔で迎えてくれる後輩の一人が見当たらないよ。

冬のなかVer

  


「喜三太がこないのだよ」



がぽそりと呟いた。
雷蔵の背中に頭をこつんと当てて、俯いている。




「あの子は登校するのは早いほうで、私が着くころにはとうに着いていて。なめくじがたくさん入っているあの壺を両手に抱えて、笑顔で挨拶してくれるのだけれども」



両手が縋るように雷蔵の服を掴む。



「こないのだよ」



勘右衛門がの背中をさすり、八左ヱ門がの頭を撫で、三郎と兵助が先生に現状を聞きに走った。

雷蔵は手が届かない代わりに、できうるかぎり優しく声をかけた。



「それはとっても心配だね」
「うん。心配だ」
「でも、大丈夫さ」



雷蔵が言うと、は雷蔵から額を離して、小首をかしげた。



「めずらしくはっきりと断言するね、雷蔵」



雷蔵はぐるりとを振り返って、小刻みに震えているの手を自らの手で包み込んだ。



「断言できるよ。だって、僕たちがどうにかするんだもの」