怖いのなら、手をつないだらいい。

恐がり穴主Ver

左吉視点  



タソガレドキ軍VS園田村・・・・もとい、タソガレドキ軍VS忍術学園との対決が決定的になった。
忍術学園全先生と全生徒は、先行していた『宿題忘れ組による山村喜三太捜索隊』と一年は組に遅れて園田村に出発した。
六年生が第一陣として敵の襲撃や罠の排除をしたはずなのだけれど、やはりすべてを防げる訳じゃないようだ。



「八左!」
「おう!」



どこからともなく飛んできた手裏剣を弾きとばした久々知先輩に、竹谷先輩が応じる。
けれど、森の中に猛進した竹谷先輩は誰も見つけられずに戻ってきた。



「やっぱプロだな、逃げられた。また襲ってくるぞ」
「そんなっ」



これまでにない緊張感に、僕は体の震えを止められなかった。
そばに寄った伝七もそうだ。

こんなんで園田村にたどり着けるのか・・?

どうにか言葉にはしなかったものの、最悪な想定ばかりしてしまう。
学園で勉強したことはたくさんあるのにこんな大事なときにでてこないのだ。

怖くてぎゅっと目をつぶると、ふいに、暖かなものが右手を包み込んだ。
そして、平時と変わらない落ち着き払った囁くような声。



「4時の方向25歩」



すると、風を切る音が響き。
目を開けると、久々知先輩が森の中に向かっていくのが見えた。



「路上42歩、中央から右」



声に答えるように、綾部先輩と田村先輩が駆け出し、落とし穴を発見して落ちる前にと破壊した。



先輩・・?」



呆然と、声の主であり、僕の右手を握ってくれてる先輩を見上げると、その人は目を伏せるように僕を見下ろした。



「大丈夫」
「でも、どうして先輩は敵や罠がわかったんですか?」



恐がっていたことがバレていた気恥ずかしさからついつい強い聞き方をしてしまったが、先輩は気にした様子はなく周囲に油断なく気を配っている。
代わりに答えてくれたのは尾浜先輩だった。


「園田村に向かう可能性が出てきてたとき、じつはは立花先輩と二人で一度村までのこの道を通っているんだ」



それは仙蔵が敵に阻まれた場合の囮として。
そして、今のように全生徒連れだって向かうときにトラップや待ち伏せをすぐさま察知するためのセンサーとして。
先輩は一晩でこの道のすべてを記憶したのだ。

なんてすごい能力!

先輩は僕の手をぎゅっと握って。



「どうしようもなく恐いときは、手を握ったらいいよって三郎が・・・・」



なんて、僕の心配もしてくれた。

「さすが先輩!」と、声を上げようとした僕は、ふと先輩のもう片方の手が違う誰かの繋がっているのに気付いた。
指先から腕へと視線を滑らせていくと・・・・。

その手は尾浜先輩と繋がっているではないか。



「・・・・・・・」



どうしようもなく恐いときは・・・か。

僕がしっかりしないと。

僕は強く先輩の手を握り返したのだった。