逆茂木の弱点を逆転する? よろしいならば秘密兵器だ。

Jiminy Ver

  



歩兵が近づけぬように村を囲むように組まれた逆茂木。
出来上がったそれを眺めて、三治郎と兵太夫ときり丸はよし、と胸を張った。



「これで敵が近づいても大丈夫だぞ!」



ほっと一息、安息ムードに入ろうとした三人に、緑の影が近づいてきた。



「いや。まだこのままだと弱いな」



びくぅうう!、と飛び上がりながら振り返った三人は、いつの間にか真後ろに立っていた用具委員長を見上げた。

きり丸が飛び出した心臓を押し戻しながら口をとがらせる。



「驚かさないでくださいよ食満先輩ー」
「それよりも、このままじゃ弱いってどういう意味ですか?」



兵太夫が首を傾げると、留三郎は逆茂木を指さして、問いかける。



「これは何だ?」
「何って、見て分かりますよ。木です」



と、三治郎が答えると。



「では、木の弱点は?」



留三郎はさらに詰問する。

これには三人ともうなり声をあげた。
うんうん悩んで、一番に覚醒したのはカラクリ部屋の片方、兵太夫だった。



「あ、火だ!」
「たしかに! 木は燃えてなくなっちゃう!!」
「おー。さすがカラクリコンビ」



三治郎がすぐさま応じるのをきり丸が拍手しながら「けどさ」と続けた。



「その弱点をどうやって克服するんだ?」
「ーーーーーー・・・いや、そこまでは」



三人は首を傾げて、すがるように留三郎を見上げた。
留三郎はそれなら心配いらないと、笑った。



「弱点を逆転すればいい」



そして、くるりと村の方を振り返り、「おーい」と、声を上げた。



「おーい。おーい、!」
「お呼びでしょーかー?」



答えたのは紫の服、四年生だった。
やる気のない返事とともに、のんびりとこちらに向かってくるその少年を見て、三治郎兵太夫きり丸は「げげっ」と声を上げて顔をひきつらせた。



「自他ともに認める滝夜叉丸先輩の親友にして、通りすがりの他人をも開発ウエポンの餌食にする凶悪犯と噂されてる先輩!?」
「おお、この拒絶的な空気。全力で引いてるな。よしよし」



その様子に笑みすら浮かべるを睨んで、留三郎は大きくため息をついた。



「よしよしって・・・。さてはお前、自分でその噂流してるな」
「だって、人の名前が覚えられないんだモン」
「モン、じゃない。まったく面倒がらずに後輩を大事にしろ」
「大事にしてるだろ。ほら、作とか作とか作とか」
「それは反応を楽しんで楽しんでるだけじゃないか!」
「まぁ気にしなさんなケトメ先輩」
「脱毛剤みたいなあだ名を付けるな!」



とまあ、なんとも小気味よいコントが始まってしまい、置いていかれそうになった一年生たちは、持ち前の適応力で復活した。



「先輩! 逆茂木はどうするんですかー!!」
「ああ、かくかくしかじかってことか。よろしい、ならば秘密兵器だ!」



ちらりと逆茂木を見ただけでは弱点に気づき、その解決策も浮かんだらしい。



「なあなあ、歩くのと吹っ飛ぶのどっちがスリクショックサスペンスだと思う?」
「歩く!?」
「飛ぶ!!?」
「スリルショックサスペンス!!??」



彼は懐に手を突っ込みながら、なかなか獰猛な笑みを浮かべたのだった。



にも提案してみたらどうでしょねケトメ先輩?」
「保健委員にそんな残酷な質問するな」