団子屋潜入からすでに一ヶ月。
の堪忍袋はとうに限界を超えていた。
それでも調査を続けているのは、並々ならぬプロ意識のなせたど根性のたまものである。
「ちゃん。外に座っている二人のお嬢さんにこの団子出してきてね」
「はい。みたらしを二つですね」
顔の筋肉を総動員して笑顔を作ったは、山を眺める絶好の場所に座る二人の少女に団子を運んだ。
「おまちどうさま」
「あ、どうも。お疲れさまです先輩」
「浅黄色の着物もいいものですね。今度オレも試してみます」
二人の少女はを見上げ、にこりと笑った。
とたん。
はお盆から手を離した。
少女の一人が慌ててキャッチする。
「先輩、せんぱーい。大丈夫ですかー?」
「っっ! 癒しが、癒しがきたーーーっ!!!」
は海に飛び込むがごとく二人に突撃し、思い切り抱きしめた。
二人の少女もとい、女装した尾浜勘右衛門と久々知兵助はびっくりながらもを受け止めた。
「相当まいっているみたいですね」
兵助の苦笑には「そうなんだ!!」と鼻息荒くした。
「バケモンジとケマケマしい馬鹿二人が馬鹿な言い合いをしながら来た所為で、店長は俺を男を弄ぶ悪女認定しやがった!」
それはそれで引いてくれるのかと思いきや、やはり期待を裏切ってくれて。
「ということは、僕にもチャンスがあるということだね」
と、過激なアプローチになったのである。
「首や尻に触れてこようとするわセクハラ紛いなことを言うわ。最悪!!!」
「・・・・・・」
五・六年全員で焼き討ちしてもいいのではないだろうか。
と、剣呑な目つきで兵助。
まずは潮江先輩と食満先輩をとっちめるべき。
と、勘右衛門。
二人は顔を見合わせ頷き、にふわりと笑みを向けた。
「先輩の苦痛は分かりました。僕たちで解決しましょう」
「そろそろ調査も終わりでしょう?」
あと何日の見込みですか?
兵助がの手を取ると、はうーんと悩みながら言った。
「あとまとめるだけだから本当は今日にでも退散を・・・」
「それは良い。今日。今日やめましょう」
「善は急げです。すっぱりばっさりやめましょう」
景芳に詰め寄る二人の勢いは先ほどのの勢いに勝るとも劣らないものであった。
「いやでも、店長になんも言ってないし」
「はい以外の発言を出せないようにします」
「どーんとまかせてください!」
はっきりと断言した二人の後輩は、この間の馬鹿二人とは雲泥の差があった。
なんと頼もしい存在であろうか。
「っ、大好きだーーー!!」
は再び、二人に飛び込んだのだった。
<つづいたらこんなだったよ>
救い主を五年生の誰にするか迷いました。
でもふつうに女装できてくれそうなのはこの二人だったので・・・・。
勘ちゃんは「けもんじ」の三日後に学園でに報告書を提出してOKをもらっちゃってます。
一番順調だったことは言うまでもなく。