「馬鹿野郎。俺を置いていけばすむことだろ」
「息絶え絶えのお荷物が口を開くな」
「だから置いていけとっ!」
夜の草原を満身創痍で歩く少年達の姿があった。
言い合いしながらも一歩ずつ忍術学園へと向かっているのは4年生きっての優等生二人、仙蔵とだ。
には歩く力すら残っておらず、仙蔵に背負われている。
その耳には、二人を囲み始めた敵の足音が届いていた。
「まだ正面には一人しかいない。仙蔵一人でも大丈夫だ。だから」
「五月蠅いと言っている」
仙蔵はピシャリと言うと、を抱え直した。
「殺されるぞ、残ると」
「・・・・・・・そうだな。でも、忍びになる者、覚悟はとうに・・・」
「ふん」
仙蔵はが怪我をしているということは考慮せず、いきなり腕の力を抜いて 、を地面に落とした。
痛みに一瞬顔をしかめたは、仙蔵が生き残るように動いたことを知り、ホッと息を吐く。
が、仙蔵はその場を動かず、懐からお馴染みの焙烙火矢を取り出したではないか。
は怒鳴った。
「馬鹿。迎え討てるわけないだろ。相手はプロだぞ。しかも8人・・・」
仙蔵は迫る気配を睨みながら、返した。
「お前を置いて帰ったら、周りが五月蠅いんでな。それに・・・・」
草むらから飛び出した黒い影に火矢を放ちながら、仙蔵は優雅に笑った。
「お前がいない日々など。張り合いがない」
「という不快な夢を見た。謝れ」
「いやいやいや。朝っぱらから奇襲ってだけでも驚くのにまさか夢の中ことにすら責任取らないといけないのか俺」
「何故私がお前のことなど気にしてやらないといけない事態に陥っているんだ。最悪だ」
「身に覚えのない非難を受けてる俺の台詞だそれ!」
布団の中から命からがら逃げ出したを追いかける不機嫌な仙蔵。
「ー。朝ごはん食べ損ねるぞー」
「・・・も仙蔵も、裸足のままだぞ」
よくある光景に慣れきってしまった小平太と長次は、を助けることもなく
。
自分達だけ先に着替えをおえて食堂にむかう。
「落ち着け仙蔵。豆腐やるから」
「それで許すのは久々知兵助だけだ」
ボカンと、爆発音が朝の学園に響いたのだった。
<END>
そういや月見屋さんからの水色の世界リクエストに仙蔵の登場があったことに
いまさらながら思い出して急遽作成。
夢でピンチ。現実でも大ピンチ!な主人公でした。
・・・・・・あれ?仙蔵って、助ける側のはずでは。