類(不運)は友(不運)を呼ぶ














「建物の中は三郎が探してくれるみたいだから俺たちは外を探すか」



が指示し、三人は建物沿いに学園を一周することにした。
先頭に、罠の回避力ナンバーワンの景芳を、そして伊作がそれでも罠に引っかかったときのために留三郎は伊作の隣を歩いていく。

しばらく歩くと、夏に草むしりを怠ったためにできた草むらの横にでた。
薬草でもないかと目を向けた伊作は、その草むらの中をがさがさ動く影を見た。



「なんだろう?」
「なにがだ?・・・・んん? なんだニ年生じゃないか」



留三郎と伊作は足を止めた。

服の色を見るに、ニ年生である。
草むらから出ているのは頭だけで、そのうえ背中を向けているため、誰なのか分からない。
どうやら彼は一心不乱に草の中を見ているらしい。



「こらこら は組二人!」



不審に思って立ち止まった二人に遅れて気づいたが憤慨しながら引き返してきた。



「止まったんならそう言わんかい。俺一人で、誰もいないのに『横の罠に注意して』なんて話しかけて、アホみたいじゃないか!」
「ごめんごめん。いや、あの子が気になって・・・」



伊作が謝りながら草むらの子を指さすと、は目をぱちくりさせて。



「藤内じゃん」



と、言った。



「は組の浦風藤内。予習が大好きで、なかなか器用だから仙蔵が目を付けてるやつだ。おーい、藤内! なにしてんだー?」



さすが後輩好きの景芳。
草むらから出ている後ろ姿だけで識別してしまった。

呼ばれた藤内はいきおいよく顔を上げると、首を伸ばして周りを見渡し、の姿を見るやすがるような目を向けた。



せんぱぁーーーいいっ」
「あー・・・。もしや、孫兵の毒虫関係?」



は藤内の右手に箸、左手に虫かごがあるのを見て問いかける。
藤内はぶんぶんと二回も頷いた。



「孫兵に頼まれて二人で探しているんですけれど、全部で32匹もいるんです! まだ8匹しか発見できてないんです!!」
「ど、毒虫!?」
「いつものことだぞ」



口をひきつらせて、困惑する留三郎と伊作に、は後輩が大切だとばかりに素っ気なく応じる。



「い組の伊賀崎孫兵は毒のある生物が大好きな生物委員で、個人でも毒虫を発見、飼育しているんだが散歩と称してよく放して逃げられちゃってんだ」
「何気にそんな危ないことがいつも起こってんの!?」
「伊作は草の中にはいるなよ」
「入らないよもちろん!」



毒虫の捕獲には大いに貢献できるだろうが、命の保証はできかねる。

遠い目になった伊作をひとまず放置し、は藤内の頭を撫でた。



「助けてやりたいのは山々だけど、子の二人の手助けをするって先約があるんだ。かくかくじかじかという理由で箱を探してるんだ。知っていることはないか?」
「箱ですか・・・。見てないです」
「そうか・・・・。箱が見つかった後、またここによるからそれまで頑張れ」
「お待ちしておりまーす」



遠くでかすかに「ジュンコー」と泣いているような声がする。
どうやら捜索対象に蛇も追加されたようだ。

藤内はげんなりした表情でたちに頭を下げ、声の下奥の茂みに去っていったのだった。















つづく




色々なやんだ結果、このシリーズではニ年生(のちの三年生たち)を出していこうと思います。
とりあえず二人。
(え。孫兵空気っ!)