それは今から数年前のこと。
久米平次が天候型不運と呼ばれるのには訳があった。
時には雨を呼び、時には雷を呼び、時には嵐をも呼ぶ。
それは規則性なものではなく、突発的かつ避けようのないときに限って起こることから誰ともなく言い始めた。
山伏の子としては特殊な力もどき・・・があることは喜ぶべきところなのだろう。
本人の意思のとおりに起こるものであるのなら。
実際は不運とつくとおりに最悪な天気になるのだから、ため息ものだ。
そして今日も今日とて、実家から学園に戻ろうとした矢先、もう吹雪となり、止んだと思って岐路に着いたら、学園に向かえば向かうほど積雪がひどくなり四苦八苦しながら久米は歩いていた。
そこで、雪に半分埋もれる小さな子供を見つけたのである。
無視するという選択肢はなかった。
久米はすぐさま子どもの近づいてうつ伏せの体を仰向けに動かした。
心臓に頭を乗せて、脈があることに安堵する。
が、どうも脈に力がない。
長いこと雪の中にいたのだろう、その小さな体は氷のように冷たく、白くなっていた。
その髪も、どこか色素の薄い色をしている。
「おーい。俺の声が聞こえるか? 返事はできるか?」
久米の問いに、うめき声が返る。
どうも久米の言葉に反応を示したわけではなく、単純に苦しくてうめいているようだ。
危険な状態だ。
久米は防寒に着ていた分厚い服を子どもにかぶせ、背負いあげた。
前方に一歩踏み出し、しかし学園よりも実家の方が距離が近いと思いなおし、来た道を引き返したのだった。
学園に戻るのは数日後になりそうだと、不運の勘が告げているのを感じながら。
<つづく>